忙しい現代人にぴったりのエッセイを翻訳しました

読書記録『멜라닌(メラニン)』

久しぶりに読んだ本の紹介を。

今年初めに読み終わり、いつか紹介したい!と思ったまま数か月……。

「差別」や「成長」といったテーマがお好きな方におすすめの一冊です。

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멜라닌(メラニン)/하승민(ハ・スンミン)

https://product.kyobobook.co.kr/detail/S000213833950

【社会のシステムや認識に疑問を投げかけ、必死にもがく少年の物語】

第29回ハンギョレ文学賞受賞。

本書では「自分とは異なる」という理由で他人を差別し、排除しようとする社会的な視線や暴力がテーマとして扱われている。肌が青いという理由で幼い頃から周囲から冷たい視線を向けられていた主人公は、新たな生活を夢見て移住したアメリカでもアジア人という理由で差別を受ける。マイノリティとしての悲哀、心を許せる仲間との出会いと別れ――。不条理な社会を必死に生き抜く主人公の姿を見ながら、いやおうなしにレイシズムや社会構造について向き合わされる一冊。


●あらすじ

主人公のジェイルは生まれつき肌が青く、幼い頃から好奇の目にさらされてきた。

母はベトナム人で、韓国人の父は暴力的で権威的な人だった。ある日、父の提案で一家はアメリカへ移住することになる。

ジェイルの母は入院した祖母を見舞うため、弟を連れてベトナムへ向かう。その後、アメリカで一緒に暮らす予定だったが、二人はいつまで経ってもアメリカへは来なかった。

大好きな母を失った喪失感にくれるジェイルだったが、親戚のガンウおじさんがよき理解者となってくれ、ジェイルの父もガンウおじさんの運営する店で働くことになる。

高校へ入学してからもジェイルを見つめる周囲の視線は冷たく、集団リンチを受けたり、強盗の犯人に疑われたりと、さまざまな差別を受ける。

しかし韓国とひとつ違っていたのは、そこにはジェイルと同じ青い肌をもつ「クロエ」という女の子がいたことだ。その後、セルマーという親しい友人もできて三人で放課後に出かけるなど、生まれてはじめてジェイルに心穏やかな時間が流れる。

ところが、穏やかな時間はそう長くは続かなかった。クロエ、そしてガンウおじさんと次々に慕っていた人を亡くしたジェイルは大きな怒りと虚無感にさいなまれる。

そしてジェイルはアメリカを離れて母と弟のいるベトナムへ向かうことにするのだった。


先日の参院選で外国人の受け入れについて激しい議論が行われたのは記録に新しいですが、主人公の暮らす不条理な社会は、分断が進んだ後の日本の姿ではないかと思わされるほどリアリティがあり他人事とは思えませんでした。

重いテーマを扱っているものの、それぞれのキャラクターがとても魅力的で読みやすかったです。