クォン・イルヨン著『死体でもいいから、そばにいてほしい 悪と寂しさの心理学』(大和書房)が刊行されました。

長年プロファイラーとして数々の事件を目撃してきた著者による、凶悪犯罪の記録です。
著者が対峙してきた凶悪犯たちについて書かれていると同時に、「悪」を突き詰めていくとそこには「寂しさ」があるのではないか――そんな著者の長年の問いが詰まった一冊でもあります。
翻訳者として、本書について簡単に紹介します。
著者について
著者のクォン・イルヨンさんは、韓国ではプロファイリングの第一人者として知られています。
近年はドラマの監修(『悪の心を読む者たち』など)をしたり、バラエティー番組に出演したりして、プロファイリングの認知度を高めるために尽力されています。
https://www.youtube.com/watch?v=Wqt3OoOTdcc
こちらは、人気バラエティー番組『아는형님(知ってるお兄さん)』に出演した際の動画です。
韓国のコンテンツが好きな方は、どこかで見かけたことがあるかもしれません。
タイトルの秘密
本書のタイトルを見て、「ものすごくインパクトがあるな…!」と感じられた方も多いのではないでしょうか?
原書名は『내가 살인자의 마음을 읽는 이유(私が殺人犯の心を読む理由)』。
もともとは別のタイトル案もありましたが、本文中に出てくるある犯人の発言「死体でもいいからそばにいてほしい」を読んだ編集者さんのアイデアにより、今回の日本語版のタイトルが生まれたのです!

「悪と寂しさの関係とは?」という本書の問いをわかりやすく示しているのはもちろんですが、書店に並んでいたら思わず手に取ってしまうであろうタイトルはこんなふうに生まれるのだなと、翻訳者としても多くの気づきを得ました。
関連作品
『死体でもいいから、そばにいてほしい』では韓国で起きた数々の事件が取り上げられています。
まず、「至尊派」事件。1990年代、当時20代の若者たちで構成された犯罪組織「至尊派」が、富裕層への嫌悪から5人もの人を殺害した事件です。
実際に被害者の多くは富裕層ではなく庶民であったことからも、犯人たちがいかに身勝手だったかが見てとれますが、この事件についてはNetflixのドキュメンタリー『私は生き延びた:韓国を揺るがせた悲劇の中で』でも紹介されています。事件から唯一生き残った被害者による生々しい証言は見ていて心が痛みましたが、ぜひ本書と合わせて鑑賞してみてはいかがでしょうか。
次に「n番部屋事件」。2018~2020年に起きたデジタル性犯罪事件で、卑劣な犯行手口や被害の大きさが韓国のみならず世界に衝撃を与えました。
本書では「現在のサイコパスの姿」として、主犯格であるチョ・ジュビンが取り上げられています。
本書を読んで事件についてもっと知りたいと思われた方におすすめしたいのが、『n番部屋を燃やし尽くせ デジタル性犯罪を追跡した「わたしたち」の記録』()。被害者を救うべく立ち上がった女性たちの取材記録です。
グルーミング、ディープフェイクなどデジタル性犯罪について知りたい方にもおすすめの一冊。
メディア情報
文春オンラインにて、『死体でもいいから、そばにいてほしい 悪と寂しさの心理学』を紹介していただきました。
ご興味のある方は、こちらもぜひ。
①https://bunshun.jp/articles/-/85343
②https://bunshun.jp/articles/-/85344
さいごに
AIの発達により私たちの生活が便利になる一方で、犯罪の現場では日々私たちが予想だにしない新たな犯罪が起きています。
起こりうる犯罪を予見し、備えることはできなくても「知っている」だけで変わることがある、そんなことを本書を訳しながら考えていました。
犯罪心理学に興味のある方、韓国の犯罪史を知りたい方、韓国ドラマが好きな方など、ぜひたくさんの方に読んでいただきたいです。

